----------ジャンル----------
プログレ----------テイスト----------
シンフォニック----------年 代----------
1960年代----------地 域----------
イギリス-----ジャケットアート-----
ヒプノシスTHE GATHERING / The West Pole 2009 Netherlands
1.When Trust Becomes Sound
2.Treasure
3.All You Are
4.The West Pole
5.No Bird Call
6.Capital Of Nowhere
7.You Promised Me A Symphony
8.Pale Traces
9.No One Spoke
10.Constant Run
オランダのオルタナティブ/アンビエント・バンドTHE GATHERINGの9thアルバムThe West Pole。
2007年に歌姫アネク・ヴァン・ガースヴァーゲンの脱退がアナウンスされた時は正直GATHERINGも終わったと思ったが、やってくれました。ノルウェー人の女性ヴォーカリストSilje Wergelandが新加入。デス・メタル~ゴシック・メタル~エレクトロニカと変遷し、オーガニックで普遍的なロックに辿り着いたアネク在籍ラスト作となった前作Home の音楽性そのままに、アネク同様にクリア且つ滑らかに歌いこなす力量で不安を一掃。素晴らしい出来映えとなりました。ゲストで#6にオランダのフォーク・シンガーAnne van den Hoogen嬢が天使のような歌声を、#8ではオランダのゴシック・メタルバンドSTREAM OF PASSIONのシンガーMarcela Bovio嬢が負けじと透明感ある伸びやかな歌唱を聴かせています。これらゲスト陣の参加が、アルバムのアクセントともなっています。特に#6は、ダブル・トラッキングされたウィスパー気味のヴォーカルが時にユニゾンで浮遊感を、そして時にハーモニーで美しく迫る英国トラッド風な新機軸で、個人的に今年のエンジェリック女性ヴォーカルNo.1ですね。
アルバム全体としては、ライブ A Noise Severe で示したようにGATHERINGがもはや所謂ゴシック・メタルでないのは明白ながら、メタル期に示していた独特の寂寥感が、ツーバス連打やディストーション・ギターというヘヴィな装飾が無くなって逆に露になっただけで芯は変わっていないという印象そのままのサウンドで今作も貫かれています。Homeでも感じましたが、又ハード・ロックに戻ってきているような感触もうれしいです。
タグリスト: ハード・ロック 女性ボーカル ヘヴィ・メタル ヨーロッパ 2000年代
BLACK SABBATH / Sabbath Bloody Sabbath 1974 UK
1. Sabbath, Bloody Sabbath
2. A National Acrobat
3. Fluff
4. Sabbra Cadabra
5. Killing Yourself To Live
6. Who Are You?
7. Looking For Today
8. Spiral Architect
BLACK SABBATHの5th。
ヘヴィでいながらメロディアスでもあるトニー・アイオミ(G)らしいリフが牽引する#1。中間部の英国っぽいメランコリックなパートと、後のヘヴィに移行するパートのギャップが、ドラマティックさを醸し出しています。
印象的なリフとワウを絡めたバッキングから染み出す邪悪なムードと、一転してポップな後半インスト・パートの対比が面白い#2。
もはや単なる息抜きどころでは無い本気度を感じさせる、アコギ中心の美しすぎるインストゥルメンタル#3。
ブルーズ・ロックの出自を感じさせるシンプルなシャッフル・ナンバーから、突如シンセをフィーチャーしたシンフォニック・パートが登場して度肝を抜く#4ではリック・ウェイクマン(Key)がゲスト参加しています。
コンパクトにまとまったリフ、トレモロを掛けたバッキング、ドラマティックなギター・ソロと様々なアイディアが盛り込まれた#5。
フィルターが効きまくったズ太いアナログシンセのリフがリードする#6。
ポップで軽快なリフからフルートを絡めた叙情的なパートへの展開が新鮮な#7。
アコギの叙情アルペジオから、これまたポップなリフを経てストリングスまで動員しメロディアスかつ壮大に盛り上がる#8。
4thで完成させた従来のおどろおどろしいヘヴィ・ロックに、シンセやストリングスを効果的に導入したドラマティックな要素を加え、音楽性の広がりを見せたアルバム。
しっとりとした質感のサウンド処理と相まって、プログレッシブ&シンフォニックなBLACK SABBATHが味わえます。
タグリスト: ハード・ロック ヘヴィ・メタル イギリス 1970年代 シンフォニック
DREAM THEATER / Systematic Chaos 2007 USA
DREAM THEATERの9thアルバムSystematic Chaosのレビュー。
1. In The Presence of Enemies Pt.1
2. Forsaken
3. Constant Motion
4. The Dark Eternal Night
5. Repentance
6. Prophets Of War
7. The Ministry of Lost Souls
8. In The Presence of Enemies Pt.2
アルバム冒頭とラストにPART1とPART2の楽曲を配すると言うKING CRIMSONのような構成の#1。まずはテーマを提示という感じで特にクライマックスは無し。
メランコリックでキャッチーなメロディとヘヴィネスが理想的に融合した#2。
仕事中毒で音数の多い自分達自身を表現したかのようなタイトルの#3。
入り組んだ音使いのリフをベースにラップ調のボーカルを配した#4。インスト・パートはアヴァンギャルドな要素も含めて多様に展開。ジョン・ミュング(B)のパーカッシブなベースがアクセントになっています。
「アルコール依存症を克服する12ステップ」シリーズの8,9ステップとなる#5は、これまでと違って落ち着いたより内省的なムード。
シンセのシーケンス・パターンに乗せた、調子の悪いQUEENのようなコーラス・パートを含んだ#6。
イントロではっきりとしたテーマ・メロディを提示し、アコギのアルペジオから静かに展開していく15分近いエピック・チューン#7。予想通りサビで盛り上がるもののメロディが弱いのが難点。今イチ突き抜けた感が足りないんですよね。インスト・パートのクオリティは高く、スリリングなシンセとギターのソロ及びハーモニーが聴ける。
思索パートから始まる#1の続きである#8。疾走する和風音階のようなリフはなかなか面白いものの、#1のインパクトが弱かっただけに、あえて分断して配置した意図が成功しているとは思えない。
アトランティックからロードランナーに移籍した第一弾。ここ数作は綿密な計算の元、明確なテーマを持つ作品が続いたが、本作はテーマが無いのがテーマのような、とにかく心機一転、思いついたものをそのまま楽曲にしたかのような作風となっている。その結果、随所にDREAM THEATERらしさを感じられる反面、新鮮な驚きに欠けるきらいも。妙なラップや変てこなコーラスが耳に残るようではね・・・・・。前作ではキレ捲くっていたジョーダン・ルーデス(Key)の存在感が薄いのも残念。
自らの音楽性を見事に表現したタイトルが秀逸なだけに惜しい。
タグリスト: プログレ ヘヴィ・メタル プログレッシブ・メタル アメリカ 2000年代
DREAM THEATER / Octavarium 2005 USA
1. The Root Of All Evil
2. The Answer Lies Within
3. These Walls
4. I Walk Beside You
5. Panic Attack
6. Never Enough
7. Sacrificed Sons
8. Octavarium
DREAM THEATERの8thアルバムOctavarium。
前作エンディングのピアノによるF音を冒頭に配したヘヴィな#1は、「アルコール依存症を克服する12ステップ」の6,7ステップ目。ラストでは#8のテーマ・メロディが提示され、コンセプト・アルバムのような体裁も。
切ないピアノに弦楽四重奏が絡む美しくメロウなバラード#2。ここでも#8のテーマがさりげなく挿入されています。
一転してひしゃげた重低音リフから始まる#3。しかし歌唱パートには透明感すら感じさせる静かなメランコリック・パートもあり、その起伏がドラマティック。
伸びやかでキャッチーな#4。
7弦あるいはバリトン・ギターによる重低音リフがリードする#5。全体的にヘヴィでありながら、叙情味を持ったメロディを共存させているDREAM THEATERらしいナンバー。インスト・パートではIRON MAIDEN風(?)3連パートと通常拍子を交互に持ってくる面白いアレンジもまた彼ららしい仕掛け。
開放的なサビメロが、小刻みにのたうつヘヴィな単音リフとのギャップを生んでいる#6。構築度の高いギター・ソロ、テクノ風シンセのシーケンスなど、アレンジのセンスも円熟の境地。
ミステリアスな歌唱パート、テクニカルなソロ・パート、メロディアスな器楽アンサンブルで構成された#7。
と、ここまで比較的コンパクトな楽曲にメロディとアレンジの妙を凝縮したトラックが続き、いよいよ5パートからなる大作#8へ。
PINK FLOYDのShine on You Crazy Diamondを彷彿させる序盤は、ジョーダン・ル-デス(Key)の独壇場。ペダル・スティールのようなポルタメントの効いた音色はContinuum fingerboardという機材を使っている模様。このアナログ・シンセ風トーンにはプログレ・ファンも大喜びでしょう。続く12弦アコギのアルペジオに乗るボーカル・パートはGENESISのようでもあります。
2パートはテーマ・メロディを中心にジェイムズ・ラブリエ(Vo)の歌唱をフィーチュアした優しく開放的なムード。
アナログ・シンセのスケール練習風ソロもGENESIS的。スピードはかなり速いですが。
緊張感を持った3パートは作詞者のマイク・ポートノイ(Dr)のコーラスが登場。はっきり言って下手ですね。
超絶アンサンブルにジャズ風も交えた器楽パートを経て激しい4パートへ。
そして壮大な5パートでは締めくくりに相応しく、歌い上げるボーカルにオーケストラも参加し大団円へ。ラストのピアノ音がアルバム冒頭への回帰を促す、というクラシックな手法も微笑ましいです。
5人で作った8作目のアルバムでタイトルもOctavarium。ジャケットやブックレットの至るところに8や5にまつわる図形やイラストが配され、コンセプト・アルバム風ではありますが、音楽そのものというよりもアートと連動した曲のキーや色々な仕掛けにテーマを隠したパッケージ・メディアとしてのトータル・コンセプトのようです。
ただ先人達がそうしてきたように、意味ありげな意匠に拘るところも又ファンの知的好奇心をくすぐる、ということをバンド(というかマイク・ポートノイとジョン・ペトルーシ)は良く解ってますね。
前作でヘヴィネスとアグレッションに一応の決着を付けたからか、本作には全体的に開放的ムードが感じられます。良いメロディをコンパクトに追求した結果でしょうか。アルバムのテーマ8=1オクターブ=8音というところに特に#2~#4あたりのメロディ志向が宣言されていると解釈しているんですが。
タグリスト: プログレ ヘヴィ・メタル プログレッシブ・メタル 2000年代 アメリカ
DREAM THEATER / Train of Thought 2003 USA
1. As I Am
2. This Dying Soul
3. Endless Sacrifice
4. Honor Thy Father
5. Vacant
6. Stream Of Consciousness
7. In The Name Of God
DREAM THEATERの7thアルバムTrain of Thought。
前作ラストのシンセストリングスのフェイドインを冒頭に配し、ルート音とオクターブ+フラットファイブによるBLACK SABBATHをオリジネイターとする不穏なリフで幕を開ける#1。
前作の1曲目As I Amの続編となる#2は「アルコール依存症を克服する12ステップ」の4,5ステップ目。
暗い叙情を漂わせたギターのアルペジオのバッキングから始まる#3。ハーモニクスを交えたヘヴィなリフから激しさを加え、複雑なアンサンブル・パートからシンセとギターによる超絶テクニカル・ソロ・バトルに展開。
マイク・ポートノイ(Dr)のロールからシンコペーションが印象的なリフへと至る疾走パート、ヘヴィなボーカル・パート、メロディアスなブリッジ、と巧みに構成された#4。ジョーダン・ルーデス(Key)のエキセントリックなトーンのソロが強烈。
ピアノにチェロを加えたバッキングに、ジェイムス・ラブリエ(Vo)の胸を締め付けるような歌唱が切ない#5。
#5のメロディを引き継ぎ、ヘヴィかつメロディアスに進行するドラマティックなインストゥルメンタル#6。テーマの反復と変奏がクラシカルな構築美を持っている。インストが多いDREAM THEATERの中でも出色の出来。ジョン・ペトルーシ(G)の鬼神のような弾き捲くりがカタルシスをもたらします。
#7はもはやその手法を完全に我が物にした壮大なエピック・チューン。バビロン風リフ、ヘヴィネスとメロディの融合、思索パート、テクニカルなアンサンブル・パート、変拍子、と全てが詰まった佳曲。
相当この時期、創作意欲が充実していたんでしょう。2枚組大ボリュームの前作から2年弱での新作リリースとなった本アルバム。シンセのオーケストレーションは姿を消し、徹底的にダークさとアグレッションに拘った結果、リフの印象度がかなり高くなっています。
タグリスト: プログレッシブ・メタル 2000年代 プログレ アメリカ ヘヴィ・メタル
DREAM THEATER / Six Degrees of Inner Turbulence 2002 USA
Disc 1
1. The Glass Prison
2. Blind Faith
3. Misunderstood
4. The Great Debate
5. Disappear
Disc 2
1. Six Degrees of Inner Turbulence
i) Overture
ii) About to Crash
iii) War Inside My Head
iv) The Test That Stumped Them All
v) Goodnight Kiss
vi) Solitary Shell
vii) About to Crash (Reprise)
viii) Losing Time/Grand Finale
DREAM THEATERの6thアルバムSix Degrees of Inner Turbulence。
全てを極めたかのような前作に続く新作ということでそれなりにプレッシャーはあったと思われますが、2枚組というボリュームでまずは度肝を抜かれます。
DISC1は従来通りのDREAM THEATERが楽しめるプログレ・メタル、DISC2は8つのパートからなる42分の組曲という構成。
前作のラストにおけるアナログ・レコードのノイズから幕を開け、ジョン・ペトルーシ(G)の7弦ギターによるロウBのヘヴィなリフに、マイク・ポートノイ(Dr)によるラップ風ボーカルやDJ風スクラッチ・ノイズ等の新機軸を加えたオープニング・チューン#1。
AOR風ボーカル・ナンバーの装いから徐々に疾走パートなどを加えて展開していく#2。
クリアなギターの優しいバッキングのキャッチーなパートからメロトロンのようなストリングスが絡み、ギターのハウリングをきっかけにヘヴィに移行する深遠でドラマティックな#3。不条理ヘヴィ・リフに乗った逆回転ギター・ソロの変態的な響きがナイス。
エフェクトを掛けたボーカルやパッド系シンセを中心としたバッキング・パートが今までに無いテイストの#4。
ミステリアスなフックを内包したメランコリックなナンバー#5。
と、DISC1は2ndで完成したDREAM THEATERのフォーマットに、若干の新しい要素を加えてアップデートしたかのような印象。
DISC2はジョーダン・ルーデス(Key)のシンセが大活躍する壮大なオーケストレーションを施したiでスタート。ポジティブなムードがまるでディズニーのようです。
軽やかなピアノを中心に爽やかにキャッチーに進行するメロディアスなii。
一転して不穏なムードでヘヴィなiii。
高速パッセージをきっかけに歯切れ良いリフがリードするivへ。疾走感の中挿入されたオリエンタルなムードが新鮮。
ジェイムス・ラブリエ(Vo)の伸びやかな美声が映えるメロウな序盤から、組曲のテーマ・メロディのリフレインを挟みマイナー調でのギター・ソロに移行するv。
アコギのカッティングがリードするアメリカン・フォーク・タッチのvi。しかしこれもそのまま終わるわけも無く終盤は入り組んだ得意の器楽アンサブルで締め。
続くviiもカラっとアメリカンなギター・リフが爽快なアップテンポのナンバー・・・・・なのは前半だけで、インスト・パートからは複雑に展開。
組曲の締めくくりは壮大なシンセのオーケストレーションから、抑えたボーカル・パートを経てジェイムス・ラブリエが歌い上げる感動の大団円へ。
若干変態な実験性を加味したDISC1、ストーリー作ながら前作とは違って爽快でポジティブな作風でまとめたDISC2と、2枚組にしたのもダテじゃありません。
アイディアの枯渇とは全く無縁であることを証明した、プログレ・メタルの第一人者らしい充実作です。
タグリスト: プログレ ヘヴィ・メタル プログレッシブ・メタル 2000年代